街角 Paris   New York 

 東京の写真学校へ通っていた2年間。私は写真展よりも絵の展覧会へよく足を運んだものでした。というのも当時、私は住込みで新聞配達やその集金をしていましたので、展覧会の無料チケットなどがよく手に入ったのです。

 その頃に観たミレーの展覧会は今でも忘れることなく、強烈な印象として私の心に残っています。ミレーやゴッホ、シスレーといったバルビゾン派や印象派の画家たちが描いてきたフランスの風景を一度見てみたい。生涯に一度でいいからルーブル美術館へ行ってみたいという思いを強く持っていた私は2005年の春、40日ほどの短い期間でしたがフランスのパリを訪ねました。

 取材費の少ない私は、できる限り安いホテルを探さなければなりませんでした。皆さんご存知だと思いますが、とにかくパリのホテルは高い。安宿を探し予約を取るのは至難の業でした。しかし、さいわいにも友人の紹介でなんとか11区にある安宿の一室を確保することができました。

 一泊29ユーロ。かなり古そうなホテルでしたが、この値段で個室ですから私は大満足でした。それともうひとつ気にいった所がありました。それは部屋のつくりが、ゴッホがアルルの町で借りていたアパートの部屋の雰囲気によく似ていたのです。

 私はもうすっかりゴッホになってしまったような気分になり毎日、朝早くから嬉しそうに撮影や美術館めぐりに出かけたのでした。そのホテルの名は、たしかHotel Tolbiacだったと思います。オーナーのマダムがなかなかの美人だったことを覚えています。