Quiet Life

 「Quiet Life」は南アフリカの、ある小さな村の静かな日常生活を撮ったに過ぎません。しかし、その社会背景にあるアパルトヘイトという非人道的な政策で苦しめられてきた村人たちの歴史をも同時に写し出せたのではないか、と思っています。

 村の生活は厳しく極めて貧しい環境でしたが、そこにはまだ牧歌的な人間の生活があり、伝統的な文化が残されていました。たとえば、1日中羊の数ばかりを数えている素朴なじいさんや、世話好きでよくおしゃべりをする陽気なばあさん、夕方遅くまで遊びまわっている子供たちの存在は、かつて日本でもよく見かけた庶民の姿と何ら変わることはありませんでした。いや、むしろアフリカ人の生活の中にこそ日本人が失いつつある人間とのつながりや寛容性がまだ残っていたような気がします。

 住む場所が違っても、人間の生活風景は普遍だという事実。まさにこの事を「Quiet Life」というテーマを通して表現したかったのです。これまでマスコミなどで伝えられてきた可哀想なアフリカ人ではなく、日々日常を淡々と生きている誇り高きアフリカ人の姿を私は伝えたかったのです。