水田 SUIDEN

 日本が今日のような経済的繁栄を成し遂げることができたのは、かつてこの国が「瑞穂の国」といわれた美しい農業国だったから、という事実をある農業関係の本を読んで知りました。 

 工業には冷却や洗浄にたくさんのきれいな水が必要で、そのきれいな水を多量に生み出しているのが農業や森林だということを知り、ますます私は農業や自然の重要性を考えるようになりました。

 戦後の日本社会は、あまりにも経済優先、効率化やスピードを重視しすぎた結果、人々は競争に追い立てられる中で疲れ果て、暮らしの豊かさを見失ってしまっている。金と物がすべての価値になってしまった現代社会。とりわけ農業が衰退していくにつれて、どうも日本人の心が乱れ、モラルが急激に低下しているような気がしてなりません。さらに気が付けば原発が54基もつくられてしまっている恐ろしい現実。

 これまでに私が旅をしてきたアジアやアフリカには日本のような物的豊かさはないとしても、心を満たす時間や人間のつながりの場がまだ多く存在していました。

 豊かに生きるということは、便利になることではない。自然と人間との交流の中で、心が満たされる社会があってこそ本当の豊かさがあると思います。そのような意味でも、これからの時代は生活を見直し、原点に戻る必要性があるのではないか。そのヒントとなるものが田んぼの風景の中にあるのでは、と考えた私は数年前から日本の水田を撮影してきました。